イベルヒール(イベルメクチン:ジェネリック)
イベルヒールは、寄生虫感染症の原因となる寄生虫を駆除し、症状を改善するために用いられる駆虫薬です。体内で寄生虫の神経や筋肉の働きを抑え、動きを止めることで自然に体外へ排出させます。
疥癬や腸管糞線虫症の治療に広く用いられており、症状に応じて1回〜2回の服用で効果が期待できます。近年、新型コロナ感染症治療薬の候補としても注目されているお薬です。
なお、本ページは薬剤師が執筆しております。
Jun薬剤師資格取得後、CROにて臨床開発業務に従事。現在は複数の調剤薬局でエリアマネージャーを務めながら、医療系メディアにて記事執筆も担当しています。
さらに、医学誌編集経験を持つ看護師が最終確認を行い、医療の専門家による二重のチェック体制で情報の正確性を担保しています。
Ray看護師資格を有し、総合病院で勤務。退職後、出版社に勤務し、医学誌の編集も担当しておりました。
※本ページの初稿は薬剤師が執筆しております。メドノア編集部が必要に応じて加筆・修正を行いますが、その際も情報の正確性と信頼性を損なわないよう細心の注意を払っています。
イベルヒールの概要
- ストロメクトールのジェネリック医薬品で、ストロメクトールよりも大幅に価格を抑えられる
- 1回の服用で効果が期待できる。効果が実感できない場合は、1〜2週間後に追加で服用できる
- 食事の影響を受けるため、空腹時に服用する
- 疥癬、腸管糞線虫症の第一選択薬として、多くの医療機関で使用されている
イベルヒールは、駆虫薬ストロメクトールの有効成分であるイベルメクチンを配合しています。体内の寄生虫の神経・筋肉を麻痺させることで排出を助け、疥癬や腸管糞線虫症の改善をサポートします。1〜2週間の短期間、かつ少ない服用回数で治療が終わります。
| 商品名 | イベルヒール |
|---|---|
| 内容量 | 1シート10錠 ※3mgと12mgの規格がございます |
| 効果・効能 | 疥癬 腸管糞線虫症 |
| 有効成分 | イベルメクチン 3mg イベルメクチン 12mg |
| 副作用 | 油漏れ(油斑)、油分を含む便(脂肪便)、放屁(おなら)の増加 過敏症 かゆみ、発疹 肝機能異常 AST上昇、ALT上昇、総ビリルビン値上昇、γ-GTP上昇 消化器症状 悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、便秘、腹痛 など |
| 形状・剤形 | 錠剤 |
| ブランド | ヒーリング・ファーマ |
イベルヒールはこんな方におすすめ
- 服用回数を少なく治療を進めたい方
- コストを抑えつつ、十分な効果と安全性のバランスを重視したい方
- 信頼できるメーカーによる、高品質なジェネリック医薬品を選びたい方
イベルヒールの有効成分について
イベルヒールは、ストロメクトールと同じ、イベルメクチンという有効成分を含んだジェネリック医薬品です。イベルメクチンは、寄生虫の神経・筋細胞にあるClチャネルに結合して過分極を起こすことで、体内の寄生虫を麻痺させることで自然に体外へ排出させます。
体重に応じた服用が必要で、症状によっては1〜2週間間隔での投与が推奨されます。
イベルヒールの効果・効能
- 疥癬の治療
- 腸管糞線虫症の治療
イベルヒールは、寄生虫の神経や筋肉に作用し、麻痺させて排出を促す駆虫薬です。疥癬や腸管糞線虫症の原因となる寄生虫を体外に取り除くことで症状の改善を目指します。
疥癬は、ヒゼンダニが皮膚に寄生して起こり、強いかゆみを伴うことが多い感染症です。腸管糞線虫症では、腹痛・吐き気などの消化器症状や蕁麻疹が現れるほか、重症化すると咳や喘鳴などを起こすことがあります。
症状に応じて1回〜2回の服用で治療でき、体の負担を抑えて症状の改善をサポートします。
イベルヒールの服用方法・使用方法
| 1回の用量 | 体重によって、用量が異なります。 以下の「体重別の1回あたりの目安服用量」を参照してください。 |
|---|---|
| 1日の服用回数 | 1回 |
| 服用するタイミング | 疥癬:1週間〜2週間 腸管糞線虫症:2週間 |
| 服用するタイミング | 空腹時(食後2時間以上経過した状態) |
使用上の注意
- 疥癬の治療初期に、一時的にかゆみが強くなることがあります
- イベルメクチンは脂溶性のため、高脂肪食により血中濃度が高くなる可能性があります
- 空腹時(食後2時間以上経過した状態)に服用してください
- 水またはぬるま湯で服用してください
- 体重によって、用量が異なります。以下の表を目安に、ご自身の体重に合った錠数を確認してください
体重別の1回あたりの目安服用量
| 目安体重 | 必要な成分量 (イベルメクチンとして) | 3mg錠の場合 | 12mg錠の場合 |
|---|---|---|---|
| 36kg〜50kg | 9mg | 3錠 | 3/4錠 |
| 51kg〜65kg | 12mg | 4錠 | 1錠 |
| 66kg〜79kg | 15mg | 5錠 | 1錠+1/4錠 |
| 80kg以上 | 体重1kgあたり0.2mg | 体重15kgあたり1錠 | 体重15kgあたり1/4錠 |
Jun日によって体重は変化しますので、服用前にご自身の体重を測定してから、服用量を決めることをおすすめします。
イベルヒールは、ピルカッターなどで分割できますので、3mg錠でも12mg錠でもご自身の体重に合わせた用量を服用できます。
イベルヒールの禁忌・副作用
禁忌
- イベルメクチンに対し過敏症の既往歴がある方
副作用
- 過敏症
- 肝機能異常
- AST上昇、ALT上昇、総ビリルビン値上昇、γ-GTP上昇
- 消化器症状
Jun疥癬の主な症状はかゆみです。治療初期には、かゆみが一時的に悪化することもあります。
皮膚科では、疥癬の方に「オイラックスクリーム」がよく処方されます。
オイラックスクリームには、クロタミトンというかゆみを抑える成分が含まれてます。
疥癬の治療中にかゆみを抑えたい方は、クロタミトンが含まれたOTCの購入をおすすめします。ステロイドが含まれていると、かゆみが悪化するおそれがあるのでご注意ください。
イベルヒールの他の薬との相互作用
併用しないこと
- 特になし
併用に注意すること
- 特になし
Junストロメクトールの添付文書に併用禁忌、併用注意は特に記載されておりません。その主な理由は、空腹時に服用するからです。
一般的な医薬品は、食後30分以内や食事の30分前に服用することがほとんどです。そのためイベルヒールは、食後2時間以上空けた状態であれば、いつでも服用できます。
イベルヒールの注意事項
- ご自身の体重に合わせた成分量を服用してください
- 「体重別の1回あたりの目安服用量」を参照してください
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する可能性
基礎研究と初期報告
- 2020年以降、海外の研究で新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の増殖抑制効果が報告され、国内でも北里研究所や興和株式会社などが臨床試験を実施しました。
- COVID-19の治療薬としてイベルメクチンが注目されるようになりました。
臨床試験の結果と国内外の評価
- 2020年以降、世界中でイベルメクチンのCOVID-19に対する臨床研究が多数行われ、いくつかの観察試験では良好な結果が報告されました。
- 特に注目されたのがインドで行われた臨床試験です。世界でも第一級の研究グループである全インド医科大学の研究グループは体重1kgあたりイベルメクチンとして0.3mgを3日間隔で2回投与したところ、新型コロナウイルス感染が83%減少したと報告しています。
- 日本では、興和が軽症患者1,030名を対象に第Ⅲ相試験を実施しましたが、プラセボ群との有意差は認められませんでした。
- 北里大学研究所の発表によると、世界27ヵ国で91件の治験および治療目的での使用のうち発症予防で89%の改善が確認できており、ウイルスに暴露されても発症を予防できる可能性が期待されています。
服用提案と安全性への配慮
- FLCCC(Front Line Covid-19 Critical Care Alliance)は、イベルメクチンをCOVID-19の予防や早期治療に使うプロトコルを発表しています。
- 一定の体重以上の成人に対して用量を設定し、ビタミン類や亜鉛との併用も推奨されました。
Junビタミン類や亜鉛などの栄養素は、免疫強化を目的として推奨されています。ビタミン類や亜鉛を意識しすぎずに、まずはバランスの良い食事やこまめな水分補給を行うことがとても重要です。
また、体重32kg未満の方に関しましては、プロトコル上でイベルメクチンの用量が記載されていません。
FLCCCとプロトコルについて
- FLCCCとは
- 2020年4月に医師と元ジャーナリスト計8名の、アメリカを拠点とした独立医療同盟(Indipendent Medical Alliance:IMA)です
- COVID-19の治療や予防に関して、現場の医師が得た知見をもとに推奨される治療方や予防法を発表している国際的な医療ネットワークであり、学術論文や臨床経験に基づく情報発信を行っています
- プロトコルとは
- 治療や検査を行う際の手順や基準をまとめた計画書です
- 特にCRO(開発業務受託機関)や製薬企業の治験では、「治験実施計画書」という正式文書を指します
- FLCCCが発表しているプロトコルは、正式な治験実施計画書ではなく、FLCCCが独自に臨床経験と論文データを基に作成した提案型の手順書であることをご理解ください
FLCCCが発表したCOVID-19に対する用法・用量の一例
- 予防目的で使用する場合(成人・体重40kg以上)
- イベルメクチン:0.2mg/kg を1回服用
- ウイルスに曝露した可能性がある場合は、1日目と48時間後の計2回服用
- 補助として以下の栄養素を併用:
- ビタミンD3:1,000IU〜3,000IU/日
- ビタミンC:500mg〜1,000mgを1日2回
- 亜鉛:30mg〜40mg/日
- メラトニン:6mg(就寝前)
- 早期治療を目的とする場合(軽症・自宅療養時)
- イベルメクチン:0.4〜0.6mg/kg を1日1回、5日間または症状が落ち着くまで服用
- 併用推奨される成分:
- アスピリン:325mg/日(禁忌がないことが条件)
- ビタミンD3:5,000 IU/日
- メラトニン:10mg(就寝前)
Jun上記の用法は、あくまでも「提案ベースのプロトコル」となります。
治療法が限られていた時期、イベルメクチンが持つ抗ウイルス作用に期待が寄せられ、多くの医師が実際の臨床の中で活用しようとしていた背景があります。
ただし、上記のイベルメクチンの用法・用量や併用薬との組み合わせは、仮説に基づいたものであり、全員に推奨できる標準治療とは異なります。
イベルヒールのよくある質問
どんな薬ですか?
先発品ストロメクトールと同じ成分である、イベルメクチンが含まれる駆虫薬です。近年はコロナ治療薬になりうる可能性があると日本だけでなく世界中で研究が進められています。
食事の影響は受けますか?
食事の影響を受けます。高脂肪食の食後に服用すると、イベルメクチンの血中濃度が高くなるおそれがあります。イベルヒールは、食後2時間以上空けてから服用してください。
自分で割って服用することは可能ですか?
イベルヒールは、吸湿性を示さないため、ピルカッターなどで分割して服用いただけます。
体重を量ると、50.7kgでした。何錠飲めば良いですか?
一般的な見解では、51kgに満たない場合は36kg〜50kgの用量が処方されます。つまり、今回はイベルメクチンの成分量として、9mg分の錠数を服用することで問題ないと思われます。(「体重別の1回あたりの目安服用量」参照)
また、日によって体重は変化しますので、服用前にご自身の体重を測定してから、服用量を決めることをおすすめします。
イベルメクチンは新型コロナウイルスに効果がありますか?
日本における軽症者を対象とした第Ⅲ相臨床試験では、有効性の有意差が認められなかったと報告されています。また、オミクロン株が主流と考えられる患者においては、症状の軽快が認められたが、イベルメクチンの有効性を見出すことができなかったと報告されています。
しかし、一部海外の研究では改善効果が見られたこと、日本の研究でも発症予防効果が見られたため、全く効果がないとは言い切れないのが現状です。
新型コロナウイルス感染症の予防や治療目的でイベルメクチンを服用してもいいですか?
新型コロナウイルス感染症に対する使用は適応外となっているため、自己判断のもとであれば服用いただけます。具体的な用法・用量は正式に発表されておりませんが、上記の「新型コロナウイルス感染症に対する可能性」を参考に、服用を検討してみてはいかがでしょうか。