忙しくて医療機関を受診する時間が取れないとき、スマートフォンで気軽に心のサポートが受けられる方法があれば助かります。
最近のアメリカの研究では、AIによる相談チャットを利用した人は、4週間で落ち込みや不安の程度が軽減されやすい傾向があることが報告されています。
本記事では、AI相談チャットの活用方法や注意点を分かりやすく解説します。短時間でも取り入れられる実践のヒントを紹介するので、ぜひ参考にしてください。
- Heinz MV, et al. Randomized Trial of a Generative AI Chatbot for Mental Health Treatment. NEJM AI. 2025-03-27. doi:10.1056/AIoa2400802
(成人210人、4週・8週で介入有利) - Dartmouth College News. First Therapy Chatbot Trial Yields Mental Health Benefits. 2025-03-27
(研究の背景と要点) - STAT News. AI Prognosis: Lessons from Dartmouth’s therapy chatbot RCT. 2025-04-02
(専門家コメントと位置づけ)
本研究の要点は以下の通りです。
- AI相談チャットを利用したグループは4週目および8週目で、抑うつや不安の改善が、待機群(利用していない群)よりも大きい
- 利用者は、使いやすさや親しみやすさも高く評価した
- 緊急時には、人間のスタッフが介入する安全網が用意されており、安全性が確保されていた
- 毎日時間を決めて、数分間だけ気持ちを整理する
- 終わったら一言メモで振り返ると、自分の気持ちを確認できる
- 調子が悪い日は無理せず中止し、翌日に回す
- AI相談は医療の代わりではなく、あくまで補助的な方法としての併用が基本
- 効果には個人差があり、長期的に持続するかどうかは今後の課題
- 研究は米国の成人を対象に行われたため、日本の環境や文化で同じ効果が得られるかは検証が必要
なお、本記事の内容については、表現に不自然な点がないか、医学雑誌の編集にも携わっていた編集の専門家が確認済みです。

編集プロダクションでの勤務経験があり、医療系出版社の月刊誌にて校正、校閲業務実績がございます。
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研究の概要
従来のスタンフォード大学発のチャットボットではなく、ダートマス大学の研究チームが開発した生成AIチャットボット「Therabot」が、実際に心理的な効果をもたらすかどうかを検証するため、無作為化比較試験(RCT)で評価されました。
評価には、抑うつ症状の指標であるPHQ-9、不安の指標であるGAD-Q-IV、摂食関連の悩みを測るWCSを用い、AIチャットボットが日常的な心理サポートとしてどの程度役立つかが比較されています。
本研究は、従来の対面セラピーや専門家による支援が受けにくい人々にとって、短時間・手軽に利用できるAI相談の可能性を示すものとして注目されています。
いつ | 2025年3月27日(NEJM AI 掲載) |
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誰が | Heinz ら(ダートマス大学) |
対象 | 成人210人(抑うつ〔MDD〕/不安〔GAD〕/摂食関連の高リスク〔CHR-FED〕のいずれかで基準を満たす) |
分析方法 | AI相談「Therabot」4週間(毎日アプリから利用促進)と待機群を比較。8週時点まで追跡 |
結果 | PHQ-9(抑うつ) ・4週間後:AI相談グループは平均で −6点改善、待機は −2.6点改善 ・8週間後:AI相談グループは −7.9点改善、待機は −4.2点改善 GAD-7(不安) ・4週間後: AI相談グループは平均で −2.32点改善、待機群は −0.13点改善 ・8週間後: AI相談グループは −3.18点改善、待機群は −1.11点改善 CHR-FED(摂食関連) ・4週間後: AI相談グループは平均で −9.83点改善、待機群は −1.66点改善 ・8週間後: AI相談グループは −10.23点改善、待機群は −3.70点改善 |
追加の 知見 | 体重や見た目への悩み ・「体重や見た目への悩み」についても、AI相談グループの改善が大きい 使ってみた感想 ・参加者は「使いやすい」「人と話しているように感じる」と評価 安全性 ・AIは「危機(例えば自殺をほのめかす発言)」を検知できる仕組みを持ち、人間の専門家が介入できる体制が整えられていました |
生活リズムに合わせたAI支援のメリット
相談文に合わせて個別の返答を作るAIは、認知行動療法(CBT)に基づき、考え方の整理や行動の工夫といった具体的なアドバイスをしてくれます。
毎日少しずつ利用することで、思考のパターンに気づき、感情の整理や小さな行動目標の実践といった練習が自然に積み重なり、継続的な改善につながります。
ダートマス大学の研究結果から分かるように、AIは利用者のペースや生活リズムに合わせて柔軟にサポートできるため、無理なく日常に取り入れやすい点も利点です。
AI相談を使用するときのコツ
はじめは1回5〜10分で十分です。朝や就寝前など決まった時間に行うことで習慣化しやすく、無理なく続けられます。
話しかける前に、その日のテーマを1行で書き出すと、短いやり取りでも焦点が定まり、思考や感情の整理に役立ちます。
終了後には、メモに「気づき」と「次に取り組むこと」を1つずつ書き留めると、自己理解や行動改善につながります。
疲れている日は無理をせず、深呼吸だけにして休むことも大切です。こうした小さな積み重ねが、心の安定や習慣的なセルフケアの定着につながります。
安全に使うための心得
AIは医療者の代わりにはなりません。体調が崩れたときや、眠れない・食欲がない状態が続くとき、自分や他人を傷つけそうな気持ちがあるときには、必ず医療機関や相談窓口に連絡してください。
実際の研究でも、AIチャットボットは日常的なセルフケアや気づきの促進には役立ちますが、危機的状況には対応できないため、専門家が介入する仕組みが組み込まれています。
また、AIは診断や治療の代替ではなく、補助的なサポートツールとして利用することが推奨されます。
AI相談に関するよくある質問
まとめ
生成AIを活用した相談チャットは、4週間の利用で利用者の落ち込みや不安を軽減する傾向が報告されています。
これは医療行為の代わりではありませんが、毎日数分間の習慣として取り入れることで、気分の管理やストレス軽減に役立つ可能性があります。
生成AIによるメンタルサポートは、対話や簡単な自己報告を通じて心理的負担を軽減する試みとして行われています。しかし、症状が重い場合や自傷リスクがある場合は、必ず医療従事者や専門家に相談する必要があります。
気軽に使えるAIツールで心をサポートしつつ、健康の最終判断は専門家に任せましょう。
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