VRの中で「近づいてくる病気っぽい人」を見ると、脳が危険を察して免疫が動き出した研究【薬剤師が確認済み】

VRの中で「近づいてくる病気っぽい人」を見ると、脳が危険を察して免疫が動き出した研究【薬剤師が確認済み】

満員電車でせき込む人が目に入ると、思わず少し距離を取ります。実はこの“先に身を守る”動きは、体の中でも起きているかもしれません。

以下のスイスの研究で、VRの中の病気っぽい人が近づくだけで、脳が危険を察して免疫が動き出すサインが見つかりました。毎日の予防行動を見直すきっかけになります。

本研究の要点は以下の通りです。

研究まとめ
何が分かったか
  • VRで感染のサインがある人が近づくと、脳の警戒ネットワークが先に反応
  • その合図に合わせて、免疫の前線の細胞が増えたり活性化した指標が上がった
  • 約250人規模、2025年7月28日公開の論文に基づく
日常での活かし方
  • 体調の悪そうな人が近くに来たら距離を少し広げる
  • 手洗い・換気・咳エチケットを習慣にする
  • 人が多い場所では触れる前に避ける意識をもつ
注意しておきたい点
  • VRを見るだけで強くなると断言はできない
  • 実験は短時間の反応を見たもので、病気の発症を減らしたわけではない
  • 基本の予防策を置き換える話ではない

なお、本記事の内容については、医学的記述や表現に不自然な点がないか、医学雑誌の編集にも携わっている薬剤師が確認済みです。

この記事を確認した薬剤師
Atsu

薬剤師資格を有し、現在でも調剤薬局で勤務しています。また医療雑誌の編集にも携わっております。

目次

研究の概要

研究チームは、「実際に触れる前に、脳が危険を察して免疫に合図を出すのか」を人で確かめました。VRを使い、安全に“感染の気配”を再現しています。

いつ2025年7月28日オンライン公開(Nature Neuroscience)
誰がスイスのジュネーブ大学(UNIGE)・ローザンヌ大学病院(CHUV)・EPFLなどの合同チーム
対象約250人の健康な成人(複数の実験に参加)
何をしたかVRで発疹やせきなど病気のサインを示すアバターを近づける、比較として中立的・怖がる表情のアバターも提示
何を測ったか反応時間、脳波(EEG)、fMRI, 血液検査(自然免疫系の細胞の変化)に加え、インフルエンザワクチンを用いた比較
結果近づいてくる病気アバターで脳の警戒ネットワークが動き、視床下部との結びつきが強まり、自然免疫の細胞(ILCやNKなど)の数や活性が上がる方向を確認。ワクチン接種時の反応に似た指標もあった

どうしてそんなことが起きるのか

私たちの脳には、体のまわりの“見えない縄張り”を見張る仕組みがあります。

そこに病気のサインがある人が入りそうになると、注意を集める脳の回路が先に動きます。

その合図が自律神経やホルモンの通路を通り、免疫の前線部隊に伝わります。研究はその流れを脳の活動と血液の変化で追いかけました。触れる前に探知機のように早く反応するのが利点です。

生活への落とし込み

この結果は、触れる前に避けることの意味を裏づけます。

  • 混雑でせき込む人や発疹が見える人が近づいたら半歩さがる
  • 手すりやドアノブをさわった手はこまめに洗う
  • 室内では換気をする

これらは目新しくありませんが、脳と免疫が先に構えるという視点からも、やる価値がはっきりします。

研究の限界とこれから

参加者は若い成人が中心で、短時間の反応を測っています。病気の発症長期の予防効果は評価していません。

また、気持ち悪さ(嫌悪感)がどこまで影響したかなど、細かな点は今後の検証が必要です。それでも、脳から免疫への連携が人で実証された価値は大きいといえます。

⚠️薬剤師による補足
Atsu

この研究結果は、脳~免疫系連携の重要性を示唆しており、薬学的観点からも興味深いものです。

日常的な感染予防行動が単なる物理的バリアだけでなく、生体防御システムの活性化にも関わる可能性があります。

感染予防には、この「見える予防」に加え、免疫機能をサポートする栄養素(亜鉛、ビタミンD・C)の摂取も重要でしょう。

特に季節の変わり目や疲労時には、これらの栄養素が不足しがちです。

バランスの良い食事と十分な睡眠などの基本的な対策をとったうえで、感染予防を意識することが大切です。

過度なストレスは免疫機能を低下させるため、適度な運動と休息のバランスも大切です。 感染リスクに応じた段階的な予防行動を心がけましょう。

予防行動のよくある質問

VRを見るだけで免疫が強くなりますか?

その結論には至っていません。今回わかったのは短時間の生体反応です。

基本の手洗い・距離・換気を優先してください。

どんなサインに注意すればいいですか?

研究では発疹やせきなど見た目のサインを使いました。

現実でも、体調の悪そうな人に近づかないのが基本です。

不安が強くなりそうです……

過度に恐れないことが大切です。

できる範囲で距離・手洗い・換気を続け、体調が悪い日は早めに休むことを優先してください。

まとめ

VRの中の病気っぽい人が近づくだけで、脳が先に察知して免疫が動くサインが示されました。

触れる前に避ける、という毎日の基本が、体の中の動きともつながっていると考えられます。できる範囲で距離・手洗い・換気を続けていきましょう。

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本記事の監修者・執筆者

メドノア編集部が監修・執筆。
記事により薬剤師による執筆、また、適宜、医療系国家資格を有する専門家(看護師資格を有し、総合病院で勤務。退職後、出版社に勤務し、医学誌の編集も担当)が、医学的記述や表現に不自然な点がないか確認をしています。
確認済みの記事には、その旨記載しております。

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