プラスチックは容器や袋など日常生活に広く使われているだけでなく、空気や水にも細かな粒(マイクロプラスチック)として存在します。
米国の研究チームは解剖で保存された人の脳を調べ、ごく小さなプラスチック片が蓄積していることを確認しました。その量は、2016年のサンプルより2024年の方が多く、主な種類はポリエチレンでした。
健康への影響はまだ明らかではありませんが、まずは現状を正しく把握することが重要になります。
- Campen MJ, et al. Bioaccumulation of microplastics in decedent human brains. Nature Medicine (2025).
(脳>肝腎、2016→2024で増加、主成分はポリエチレン) - University of New Mexico Health Sciences. UNM Researchers Find Alarmingly High Levels of Microplastics in Human Brains – and Concentrations are Growing Over Time. Feb 28, 2025
(一般向け解説。約50%増の説明) - Li L, et al. Microplastics in the Olfactory Bulb of the Human Brain.JAMA Network Open (2024).
(鼻から脳に至る経路の示唆)
本研究の要点は以下の通りです。
- 人の脳に微小なプラスチック片が見つかった
- 脳の方が、肝臓や腎臓よりもプラスチック片が多い傾向があった
- 2016年→2024年で増加していた
- 体への因果関係は分かっていない
- どのくらいで害が出るかは未解明
- どこから脳へ入りやすいのかは研究中
- 使い捨てのプラスチックを減らす選択を少し増やす
- 加熱時のプラ容器はできるだけ避ける
- 室内のほこり対策や換気を心がける
なお、本記事の内容については、表現に不自然な点がないか、医学雑誌の編集にも携わっていた編集の専門家が確認済みです。

編集プロダクションでの勤務経験があり、医療系出版社の月刊誌にて校正、校閲業務実績がございます。
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研究の概要
本研究では、解剖で保存されていた人の組織を対象に、特別な分析機器を用いてマイクロプラスチックの種類と量を調べました。脳に加えて、比較用に肝臓と腎臓のサンプルも分析しています。
2016年に収集されたサンプルと2024年の新しいサンプルを同じ手法で測定し、変化を比較しました。
いつ | 2025年にNature Medicineで報告 |
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誰が | ニューメキシコ大学などの研究チーム |
対象 | 解剖サンプル(脳・肝臓・腎臓)。2016年分と2024年分を比較 |
何をしたか | 組織を溶かして残った固まりを分析し、プラスチックの種類と量を測定 |
結果 | 脳がいちばん多く、2016年→2024年で大きく増加。主成分はポリエチレンが占めており、脳のプラスチックの割合は肝腎より高い傾向が分かった |
脳にどうやって入るのか
どのように体に入るのか、まだ明確には分かっていません。
今回の研究では、非常に小さい(ナノサイズ)プラスチック片が多く確認されました。発見された大きさだと、体内を通り抜けやすい可能性があります。
また、別の研究では鼻の奥の嗅球でプラスチック片が見つかった例もあり、鼻から侵入する経路も考えられます。ただし、いずれも確定したものではなく、今後さらなる研究が必要です。
体への影響はあるのか
今回の研究は、プラスチックが人体にどの程度の害をもたらすかまでは明らかにしていません。
分かったのは、量が増えていることと、脳に多い傾向があるという事実です。動物実験では、ごく小さなプラスチック片によって炎症やストレス反応が起きる例が報告されていますが、人でも同じことが起きるかどうかは今後の課題です。
まずは焦らず、今後の研究や情報を注視していくことが大切です。
身近でできる向き合い方
今回の研究は原因や対策を明らかにしたわけではありませんが、日常の中でできる工夫はいくつかあります。
- 温める食品はガラスや陶器の容器に移して使う
- 水筒やコップは洗って繰り返し使う
- 掃除はぬれ拭きを取り入れ、換気の回数を増やす
無理なく続けられるものを一つだけ選び、習慣にすることから始めてみてください。
本研究におけるマイクロプラスチック片に関するよくある質問
まとめ
人の脳にごく小さなプラスチック片が存在し、その量が2016年から2024年にかけて増えていたことが報告されました。主な成分はポリエチレンです。ただし、体への影響についてはまだ明らかではありません。
大切なのは、まずこの事実を知り、日常の中でできる工夫を無理のない範囲で一つずつ続けていくことです。
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